中神英子「砂丘」孤独 [something blue]
砂丘 中神英子
よる 鳥が来て
わたしのかたちで啼くので
私は砂を握り眠る
鳥がわたしの両手に翼をそえて
その啼き声通り
わたしが あした はろばろと歩む
砂丘を作ってくれるように
やわらかに美しく流れる風紋と
乾いた清涼な空気の中に
新しい夜明けをもって
立てるように・・・・・・・・・・・・と
まだくらいうちに
わたしの方向へ鳥が来て
わたしのかたちで啼くことを
わたしは知っているので
よる
わたしはわたしの分の砂を握り眠る
※
この詩は私を私の知らない異次元への世界へとひきこんでいく。
「よる 鳥が来て
わたいのかたちで啼くので
わたしは砂を握り眠る」
で始まり、声高でも刺激的でもなく、静かにかたられていきます。
決して今まで見たこともない。聞いたこともないとは強く感じないのですが、これまでの私の世界の
向こう側を通っているような気がします。
「わたしがあした はろばろと歩む
砂丘を作ってくれるように」
その世界は決して堅固ではないのだけれど、私の内側と同じぐらい、しっかりと脈打っている。
異次元だと思っていた世界は、もしかしたら、私自身のなかに遠い昔からあったかも知れない。
「まだくらいうちに
わたしの方向にへ鳥が来て
わたしのかたちで啼くことを
わたしは知っているので
よる
わたしはわたとしの分の砂を握り眠る」
この詩人は独りで自分を抱きしめているのだろう。
詩はこの詩人の唯一の支えであろうと思います。
2015-05-16 11:51
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